2018年09月13日

「霊」とは何か

「霊」の見方

「霊」は存在するのでしょうか。しかし、「霊は存在するか」と漠然と問うても、そもそも「霊とは何か」というのは、結構難しい問題です。この場合も、「存在する」とはどういうことか、ということが問題となります。少なくとも、「物質的なもの」と同じ意味で、「存在する」というのではないことは明らかだからです。

とはいえ、あまり、このような問題に拘るのも、得策ではありません。以下、一通り、「霊」の意味するところを、みておくことにしましょう。

「霊」は、辞書でみると、「たましい」、「魂」、「精神」を意味するとされています。まあ、これは、「心の深くにあると想定される何らかの実体」というものを、広く漠然と指す意味に解してよいでしょう。

しかし、普通は、「霊」というと、人間の死後、その者の生前の特徴をもって現れ出る「霊」、すなわち「幽霊」のことを指すと思われます。「霊」は、人間の死後も、つまり、肉体がなくなった後も残る何物かであることが、前提とされているのです。先の、「心の深くにあると想定される何らかの実体」というのとも、「死後にも残るもの」ということで、通じることになります。「霊」は、死後は消滅する、「肉体」とは区別されるものという意味を、特にもっているということもできます。

同じような意味合いで、「魂」という言い方もよくされますが、「霊」と「魂」は、本来は同じ意味ではなかったようです。それは、中国でも、西洋(「スピリット」と「ソウル」)でも同じです。

そもそも、このような、人の心にある「実体」を、「一つのもの」のようにみなすのは、近代人の発想に過ぎません。人には、一つのまとまった、分割できない「自我」がある、という発想です。しかし、たとえば、古代エジプトでも、「霊」には、「バー」と「カー」という二つのものがあり、中国でも、「魂」と「魄」という二つのものがあるとされていました。そして、「バー」や「魂」は、天に帰り、「カー」や「魄」は、地に帰ると解されていました。

「バー」や「魂」は、より肉体から離れた、純粋に「精神的」要素の強い「霊」の部分で、「カー」や「魄」は、より肉体に近い、(「物質そのもの」ではないが)「物質的要素」の強い「霊」の部分ということがいえます。「魂」と「魄」で言えば、「魂」は「陽の気」で、「魄」は「陰の気」ということもいわれます。

さらに、先住民の文化やアイヌなどでは、「霊」には、二つどころか、多くがあり、かなりややこしいものがあります。ただ、もともと、生まれながらに多くあるというより、後に、「憑く」という形で、取り込まれるものもあるようです。

シュタイナーなどの「オカルト」説では、「霊」「魂」「体」の三分説というのが
よくいわれます。「霊」というのは、純粋な「意識」の部分で、「魂」というのは、「霊」と「体」をつなぐ、中間的な部分、「体」というのは、「肉体」的な部分です。ただし、この「体」は、「物質的な肉体」に限らず、「エーテル的」、「アストラル的」なものが、あるまとまりをなして、まとわれるという形の、「体」も含みます。

このように、肉体以外の「体」を認めるわけですが、一般に、幽霊などが目撃されるときも、生前の肉体とそっくりの「体」をまとっていることから、理解できると思います。「幽体離脱」などでも、肉体にそっくりの体が離れるということが言われ、また、体験者には、そのとおり実感されます。

何しろ、「三分説」では、これらの「霊」「魂」「体」の三部分が、互いに絡み合って、全体として人間の個体を、構成しているとみるのです。

いずれにしても、「霊」とは、単純に「一つのもの」とは言えないということを、確認しておくことは必要です。近代人には、違和感があるでしょうが、自分の中にも、相入れない心の要素が多くあること、「多重人格障害」などの例でみるように、多くの人格が現れ出ることもあることを顧みれば、納得できないことではないでしょう。

とすれば、「死後に残る霊」といっても、必ずしも、一つのものとは限らないわけです。また、「スピリチュアリズム」においては、「類魂」と言って、死後の魂は、同じ魂のグループに融合すると解するものがあります。この場合は、むしろ、死後の霊が融合して、生前のような、一つのものではなくなる可能性があるわけです。

また、「霊」は、一つのものではないとすると、自分の中の、一部の霊が、生きている間にも、「抜け出る」ということもあり得るわけです。「生き霊」といわれるものがそうで、それが他人に憑くということもあるとされます。

「物質的なもの」と「霊」

先に触れたように、「霊」というのは、「肉体」つまり、「物質的なもの」に対する言葉ということも、重要な視点です。前に、スピリチュアリズムは、「物質的なもの」に対抗する意味合いをもって、出て来たことを述べました。まさに、「物質」ではなく、「霊」をこそ重視するからです。

ただし、「物質的なもの」と「霊的なもの」が、画然と区別されるかというと、そんなことはないのです。

たとえば、「幽霊」というのも、物質的なものと同じように現れることがあります。『呼び覚まされる 霊性の震災学』でも、まったく普通の乗客と同じように、しゃべり、触れることができるので、タクシードライバーが、メーターを倒して普通に載せると、途中で消えてしまったという「幽霊」の話が載っています。私も、経験がありますが、見かけ上、まったく生きている、普通の人間と変わらない幽霊もあるのです。ただし、いずれ、消滅したり、既に死んでいる人であることが分かることから、「幽霊」と判明するのです。

「物質的なもの」と「霊的なもの」が、画然と区別されるかのようにみなす発想も、近代に始まるといえます。デカルトの「物心二元論」というのが、その象徴でしょう。スピリチュアリズムも、科学など、物質的なものについての知見が重ねられて、「物質的なもの」というのがある程度明確になって、初めてそれに対抗する「霊的なもの」が、重要なものとして認識されたということができます。

ところが、近代以前には、「霊的なもの」といっても、「物質的なもの」と明確に区別されず、不可分のようにみなされていたのが分かります。それは、「物質」についての知見が、あまりなかったからということもありますが、しかし、全体としては、より真実そのままを捉えていたことになります。

先の、「バー」と「カー」や「魂」と「魄」の発想も、そのような「物質的なもの」と結びついた「霊的なもの」をはっきりと認める発想です。

しかし、「霊的なもの」が「物質的なもの」のように現れ出ることがあることを、理解するには、「霊的なもの」と「物質的なもの」の関係を、ある程度はっきりさせておくことも必要でしょう。

いずれ詳しくみますが、簡単に述べておくと、シュタイナーなどの「オカルト説」では、「霊的なもの」が「物質的なもの」を包含し、「霊的なもの」が凝縮されて、「物質的なもの」として現れ出るという発想をします。先の、物質的なものとして現れる幽霊も、そのような見方によって、理解できます。幽霊以外にも、ポルターガイスト現象や、ラップ音など、物質的な現象を起こす「霊」は多くありますが、それにも、同様の発想ができます。スピリチュアリズムでは、「エクトプラズム」という、半物質的な霊的エネルギーを使って、「物質化」がなされると解します。

人間以外の存在と「霊」

しかし、人間に「霊」というものがあり、死後も残るのだとしたら、人間以外のものにも、そのような霊がある可能性があることになるはずです。それは、人間以外の動物ということに、とりあえずはなります。しかし、人間の霊が、肉体がなくても、霊だけで存続できるとすれば、もともと肉体がなくても、霊だけで存在しているものもいるのではないか、ということが問題となります。

実際、昔からいわれた、人間以外の「精霊」や「神々」「妖怪」なども、そういった存在です(先にみたように、「物質化」して現れることはあります)。一神教にいう「神」もまた、そういうものともいえます。「霊」を認めるとなると、このような、昔から信じられた存在を、認める可能性も出てくることになります。というより、「霊」を認めるなら、人間だけにしか認めないという方が、むしろ不自然なことになるでしょう。

「霊」が「存在する」ということ

初めに述べたように、このような「霊」が「存在する」とした場合、それは、「物質的なもの」と同じ意味で「存在する」ということではありません。たとえば、幽霊の場合、姿かたちが、一部分だけだったり、半透明に透けていたり、大きく変形していたりと、「物質的なもの」では不可能な現れ方をしたりします。また、先にみたように、「物質的なもの」と同じ現れをすることはあったとしても、いずれ消えてしまうなど、「物質的なもの」そのものとはみなせないことになります。

このようなものは、「物質的なもののみが存在する」という見方からすれば、「存在する」とはいえないものとなるでしょう。逆に言えば、「霊」を認めるということは、「物質的なもの」とは別のものが「存在する」ことを、認めるということです。「存在する」ということの意味合いそのものに、大きな変更を加えることになるということです。「世界観」としても、大きな変更になるのは、当然のことでしょう。

ただし、「霊」も、「物質的なもの」と結びついている範囲で、科学の対象にはなり得るとも言えます。実際に、霊についても、科学的にアプローチしようという試みは、超能力の場合と同様に、あります。次回は、それについてみることにします。



posted by ティエム at 21:52| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする